華やかな競馬の世界を引退した競走馬たちが、その後どのような道を歩むのか気になったことはありませんか。
多くの方は、引退するとそのまま乗馬クラブなどに行って活躍しているイメージをお持ちかもしれません。
しかし、実はレースを終えた競走馬の多くは、新しい仕事に就く前に「リトレーニング(再調教)」と呼ばれる重要な訓練を受けています。
競馬で求められる能力と、乗馬やホースセラピーで必要とされる能力には非常に大きな違いがあるため、このステップが欠かせません。
この記事では、リトレーニングとは何か、なぜ再調教が必要なのか、どのような訓練を行い、引退後にどんな仕事へ進むのかをわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- リトレーニング(再調教)の定義と競走馬にとっての重要性
- 競走馬と乗馬に求められる能力の違いと訓練が必要な理由
- リトレーニングと引退馬支援の関係
リトレーニング(再調教)とは?引退馬の新たなスタート
リトレーニングとは、競走馬としての役目を終えた馬が、乗馬やホースセラピーといった新しい役割を担うために受ける「再調教」のことです。
競走馬は生まれてから一貫して、レースで最も速く走ることを目標に育てられ、訓練を積み重ねてきています。
そのため、競馬場以外の場所で人間と安全に過ごすためのルールや、乗馬としての基本的な動きは身に付いていないことが一般的です。
リトレーニングは、決してこれまでの競馬の経験をすべて否定したり、無理に忘れさせたりするためのものではありません。
馬たちがこれまでに培ってきた身体能力や賢さを活かしながら、次の新しい馬生(ばせい)を穏やかに歩むための橋渡しをする大切な取り組みです。
この訓練を経ることで、馬たちは人間との新しい関係性を築き、多様な環境に適応できるようになります。
| 項目 | 概要 | 目的 |
| リトレーニングの定義 | 競走馬から乗馬等への転向を目指す再調教 | 新しい役割への適応 |
| 競走馬の前提 | レースで速く走るための訓練を受けている | 競技パフォーマンスの最大化 |
| 訓練の位置づけ | 過去の経験を否定せず、新しい約束事を学ぶ | 安全な第二の人生のスタート |

ただ乗馬になるのではなく、新しい役割を学ぶ期間があるのですね。
なぜ再調教が必要なのか?競走馬と乗馬の明確な違い
競走馬と乗馬では、人間との関わり方や求められる行動様式に大きな違いが存在します。
競走馬の仕事は「レースで他の馬よりも速く走ること」であり、スタートの合図とともに爆発的な加速をすることが求められます。
一方で、乗馬やホースセラピーの現場では「背中に人を安全に乗せ、指示に従って落ち着いて行動すること」が最優先の役割です。
競馬では前へ進む強い推進力が重視されますが、乗馬ではゆっくり歩くことや、人の指示でピタッと静止する制御の正確さが求められます。
また、レース中の興奮状態とは異なり、初心者や子どもが周囲にいても動じない穏やかな精神状態を維持することも必要です。
このような能力の方向性の違いを埋めるために、引退後の専門的なリトレーニングが不可欠となっています。
| 特徴の比較 | 競走馬 | 乗馬・セラピー馬 |
| 主な目的 | レースで他馬よりも速く走ること | 安全に人を乗せて歩くこと |
| 求められる動作 | スタート時の急加速、全力疾走 | ゆっくり歩くこと、正確な停止 |
| 精神面の特徴 | 勝負に向けた高い闘争心と興奮 | 周囲の環境に動じない穏やかさ |



求められる役割が真逆だからこそ、丁寧な教え直しが必要なのですね。
リトレーニングで学ぶ具体的な訓練内容と進路
リトレーニングの現場では、馬の個性や健康状態に合わせて、段階的な訓練カリキュラムが組まれています。
基本的な訓練としては、人との新しい信頼関係の構築をはじめ、合図に応じて「ゆっくり歩く」「止まる」といった基礎動作の習得が行われます。
競走馬時代とは異なる軽いハミ(馬の口に含ませる道具)やサドルに慣れさせることも、重要な訓練プロセスのひとつです。
さらに、競馬場のような整備された環境だけでなく、物音や他の動物、傘などの見慣れない物体に対して驚かないような環境順化も行われます。
これらの訓練を無事に終えた馬たちは、それぞれの適性に応じた新しい進路へと進んでいくことになります。
主な進路としては、乗馬クラブでのレッスン馬、観光施設での乗馬体験、福祉やリハビリを支えるホースセラピーなど多岐にわたります。
| 訓練・進路の要素 | 具体的な内容 | 主な役割 |
| 基礎訓練 | 人との信頼関係、歩行・停止の合図 | 安全性の確保と基本制御 |
| さまざまな環境に慣れる訓練(環境順化) | 見慣れない物や音に驚かない訓練 | パニックの防止 |
| 主な進路:乗馬 | 乗馬クラブや観光施設への配属 | 一般の利用者を背に乗せる仕事 |
| 主な進路:セラピー | 福祉施設やリハビリ現場での活動 | 心身のケアや人とふれあう活動 |



個性に合わせた訓練を経て、様々な場所で活躍していくのですね。
競走馬の引退後には、繁殖馬や功労馬など、さまざまな進路があります。詳しくは「競走馬の引退後はどうなる?」の記事で紹介しています。
▶競走馬の引退後はどうなる?セカンドキャリアや支援の現状をわかりやすく紹介
引退馬支援におけるリトレーニングの現状と課題
引退競走馬のセカンドキャリアを支えるリトレーニングですが、運営におけるいくつかの大きな課題も指摘されています。
リトレーニングを完了して新しい仕事に就くためには、数か月から状況によってはそれ以上の時間と、多額の維持費・調教費用が必要です。
また、競走馬から乗馬への転向を専門的に指導できる高度な技術を持ったスタッフや、受け入れ施設が限られている点も課題となっています。
馬の性格や現役時代の怪我の回復具合によっては、必ずしもすべての馬が短期間で乗馬に適応できるとは限りません。
そのため、民間企業だけでなく、さまざまな引退馬支援団体や、ふるさと納税をはじめとする公的な仕組みを通じた支援が重要視されています。
こうした背景から、リトレーニングの仕組みを安定して継続させるための経済的・組織的な基盤づくりが、現在も模索され続けています。
| 課題の分類 | 具体的な現状 | 求められる対策 |
| 費用・時間の負担 | 調教期間中の維持費や人件費が大きくかかる | 寄付やふるさと納税の活用 |
| 専門人材の不足 | 再調教を専門に行える調教師が限られている | 人材育成と受け入れ態勢の拡充 |
| 個体差への対応 | 怪我の有無や気性により進捗に差が出る | 長期的な見守りと適切な進路選択 |



新しい道を開くためには、支える人手や費用も大きな要素なのですね。
引退馬支援について詳しく知りたい方は、「引退馬支援とは?」の記事をご覧ください。
▶引退馬支援とは?私たちにできる支援方法や寄付の始め方をわかりやすく解説
私がリトレーニングで素敵だと思うこと
競馬では、一生懸命走ることが仕事だった馬たち。
その馬たちが、今度は子どもたちを乗せたり、人を笑顔にしたり、福祉や教育の現場で活躍する姿を知ったとき、とても温かい気持ちになりました。
同じ一頭の馬でも、役割が変われば新しい魅力が生まれます。
リトレーニングは、競走馬に「第二の人生」をプレゼントする大切な取り組みなのだと感じています。



馬の新しい魅力を引き出す役割も担っていると考えられますね。
よくある質問
- リトレーニングには具体的にどれくらいの期間がかかりますか?
-
馬の性格、健康状態、そして目標とする次の進路によって期間は大きく変動します。
早い場合であれば数か月程度で基本的な乗馬の合図を覚える馬もいますが、気性が激しい場合や現役時代の怪我のケアが必要な場合は、1年以上の長期にわたるケースもあります。
- 競走馬は引退後すぐ乗馬になれますか?
-
いいえ。競走馬は引退後すぐに乗馬になれるわけではありません。
レースで速く走るための訓練を受けてきた競走馬は、乗馬として安全に人を乗せるために「リトレーニング(再調教)」を受ける必要があります。
馬の性格や健康状態によって訓練期間は異なりますが、この再調教を経て、乗馬クラブやホースセラピーなど新しい仕事で活躍する馬が多くいます。
- リトレーニングを終えた馬の主な進路にはどのようなものがありますか?
-
主な進路としては、乗馬クラブでのレッスン馬や観光用の引き馬が挙げられます。
その他にも、障がい者スポーツのパートナー、福祉施設でのホースセラピー活動、伝統的なお祭りや地域のイベントでのふれあい馬など、適性に応じた多様な選択肢があります。
- 一般の人がリトレーニングや引退馬を支援する方法はありますか?
-
個人でも可能な支援方法はいくつか存在します。
引退馬を保護・調教している支援団体への定期的な寄付や、地方自治体のふるさと納税を活用した支援プログラムへの参加、リトレーニングを実施している牧場の見学やグッズ購入などが一般的な手段として知られています。
- 競馬の現役時代に活躍できなかった馬でも乗馬になれますか?
-
十分に可能です。
レースでの速さと、乗馬に求められる素静さや穏やかさは関係がないため、競走成績に関わらず、リトレーニングによって優れた乗馬やセラピー馬として活躍する事例は数多く存在します。
まとめ
リトレーニング(再調教)とは、競走馬を引退した馬たちが、乗馬やホースセラピーといった新しい役割に対応するために受ける大切なステップです。
レースで速く走るための訓練を受けてきた馬たちが、人間の指示に合わせてゆっくり歩き、安全に伴走できるようになるためには、時間をかけた丁寧な教え直しが欠かせません。
この取り組みによって、多くの馬たちが競馬場を去った後も、新たな舞台で人間を支え、笑顔にする「第二の人生」を見つけることができています。
一方で、リトレーニングの継続には専門的な技術を持つスタッフの確保や、期間中の維持管理費といった現実的な課題が多く存在することも事実です。
こうした背景や仕組みについての理解を深めることが、引退した馬たちの未来の可能性を広げるための大切な土台となるでしょう。
※掲載している支援方法や制度は変更される場合があります。最新情報は各団体の公式サイトをご確認ください。
※本記事はJRA・引退馬協会・JAIRSなどの公開情報をもとに作成し、筆者の見解を交えて構成しています。
出典・参考資料
引退馬の未来や支援についてさらに知りたい方は、こちらの記事もぜひご覧ください。













