引退競走馬の養老費用は、月額の預託料に加え、獣医療費や削蹄費などが必要になる場合があります。
引退馬協会では、馬を預託して生涯養う場合、預託料だけでも年間40万〜100万円程度かかると案内しています。
実際には月額10万円を超える施設もあり、料金に含まれるサービスも一律ではありません。
この記事では、引退競走馬の月額預託料の比較、維持費の内訳、追加費用、費用負担の仕組みを公開情報に基づいて解説します。
この記事でわかること
- 養老牧場3施設の月額預託料
- 飼料代や管理費などの維持費の内訳
- 医療費・削蹄費・入厩時の追加費用
- 施設ごとの料金差と費用負担の仕組み
- 長期的な養老費用と継続支援の課題
引退競走馬の養老費用はいくら?月額預託料を比較
引退競走馬を養老牧場に預ける際の料金は、施設によって異なります。
公開されている3施設の月額料金を比較しました。
| 施設名 | 月額料金 | 料金の特徴 |
|---|---|---|
| 土佐黒潮牧場 | 70,000円(税込) | 保証金不要 |
| アヴニールファーム | 110,000円(税込) | 月1回の健康診断費用込み |
| あしずりダディー牧場 | 100,000円 | 預託代70,000円+寄付金30,000円 |
※各施設の公開情報に基づく料金例で、全国平均ではありません。あしずりダディー牧場の金額は公式サイトの全頭厩舎飼いの掲載額で、税込・税別の区分は確認が必要です。
月額70,000円なら年間840,000円、月額110,000円なら年間1,320,000円になります。
これは月額料金を12か月分として計算した金額で、追加費用は含まれていません。
なお、あしずりダディー牧場は、引退馬協会の施設一覧では月額58,000円(税込)と掲載されています。
牧場公式サイトの月額100,000円とは金額が異なり、その理由は確認できていません。
預託料は施設の最新案内と契約条件を直接確認することが重要です。
引退競走馬の維持費には何が含まれる?
月額預託料は、馬の食事だけでなく、日常の飼養管理や施設の維持などに関わる費用です。
一般的な維持費の内訳を整理しました。
| 費用項目 | 主な内容 |
|---|---|
| 飼料代 | 牧草・配合飼料・栄養補助食品など |
| 敷料代 | 馬房に使用するわら・おがくずなど |
| 施設管理費 | 厩舎・放牧地・設備の維持管理 |
| 人件費 | 給餌・清掃・放牧・健康観察など |
※一般的な飼養管理の費用項目です。各項目が月額預託料にどこまで含まれるかは、施設によって異なります。
飼料代・牧草代
引退競走馬は、現役を退いたあとも毎日の食事が欠かせません。
牧草や配合飼料を中心に、年齢や健康状態に応じて必要な栄養を補います。
例えば、あしずりダディー牧場では、チモシーを中心に、おからや野菜、健康補助食品などを組み合わせた給餌内容を公開しています。
高齢馬や持病のある馬では、個体に合わせた飼料の調整が必要になる場合もあります。
厩舎・放牧地の管理費と人件費
牧場では、馬房の清掃や敷料の交換、給餌、放牧などが日常的に行われます。
厩舎や放牧地の設備を維持するほか、馬の小さな体調変化に気づくための観察も必要です。
つまり、養老費用は馬の生活環境と、毎日の世話を続けるための費用でもあります。
預託料以外に必要な費用は?
月額預託料とは別に、医療や蹄のケア、入厩時の支払いが必要になる施設もあります。
獣医療費・予防接種・削蹄費
馬の健康を維持するには、獣医師による診察や予防接種、蹄を整える削蹄・装蹄などが必要です。
あしずりダディー牧場では、削蹄代を預託代とは別に設定しています。
- 削蹄代:1回9,900円(税込)
- 実施回数:年間6回
- 年間の削蹄費用:59,400円
これは同牧場の公開料金に基づく例です。
病気やけがの治療費は、症状や治療内容によって変わるため、一律の金額では示せません。
入厩料・保証金・馬の輸送費
馬を新しく預ける際には、月額料金とは別に初期費用が発生することがあります。
実際に公開されている金額は次の通りです。
| 施設名 | 費用項目 | 掲載金額 |
|---|---|---|
| あしずりダディー牧場 | 入厩準備金 | 100,000円 |
| あしずりダディー牧場 | 入厩代金 | 100,000円 |
| アヴニールファーム | 保証金 | 110,000円(税込) |
| アヴニールファーム | 入厩料 | 110,000円(税込) |
※各施設の公開情報による金額です。あしずりダディー牧場の初期費用は税込・税別の区分を確認してください。保証金の返還条件などは契約前に確認が必要です。
また、馬運車で牧場まで移動する場合は、輸送距離や条件に応じた費用も発生します。
月額預託料とは別に、入厩時の支払いと必要に応じた追加費用を見込んでおくことが大切です。
養老牧場によって預託料が違う理由
養老牧場の預託料には、施設の設備や管理体制、預かる馬の状態などが関係します。
飼養環境や管理方法による違い
養老牧場によって、厩舎や放牧地の設備、日常の管理方法はさまざまです。
放牧中心の管理か、馬房で過ごす時間が長い管理かによっても、必要な設備や作業は異なります。
また、高齢馬や特別なケアを必要とする馬への対応力も、施設選びでは重要です。
ただし、預託料が高いほど必ず管理が優れている、安いほど環境が悪いとは判断できません。
同じ条件で料金を比較することが大切
施設の料金を比較する際は、月額料金の数字だけでなく、次のような条件を確認したいところです。
- 飼養環境や日常の管理体制
- 馬の年齢・健康状態に応じた受け入れ条件
- 月額料金に含まれるサービスの範囲
- 料金改定や契約終了に関する取り決め
今は健康な馬でも、年齢を重ねれば必要なケアが変わる可能性があります。

今の料金だけでなく、馬が高齢になったときも預かってもらえるのか。将来の暮らしまで考えて施設を選びたいですね。
引退競走馬の養老費用は誰が負担する?
養老費用は、馬の所有者が負担する場合と、支援団体や会員制度によってまかなわれる場合があります。
馬主・所有者が負担するケース
引退競走馬を個人で引き取り、養老牧場に預ける場合、所有者が預託契約を結んで費用を負担する形があります。
具体的な支払範囲や責任は、所有関係や契約内容によって異なります。
引退馬協会も、馬を引き取る前に、終生飼養できる資金や預託先、万一の際の対応を考えるよう呼びかけています。
支援団体や会員が支えるケース
引退競走馬の養老費用を、複数の支援者で支える仕組みもあります。
例えば、TCC引退競走馬ファンクラブでは、1口5,500円のオーナー制度による支援を行っています。
公開されている預託料分配型の仕組みでは、会費の使い道を次のように設定しています。
- 70%:提携施設への預託料
- 20%:オーナー特典や管理費などの諸経費
- 10%:TCCみらい基金への積み立て
1口5,500円は馬1頭の養老費用ではなく、複数の人が参加して資金を集める仕組みです。
※TCCの公開する預託料分配型の仕組みです。すべての馬の契約が同じ条件とは限りません。
養老費用から考える継続支援の大切さ
ここからは、公開されている料金と支援制度をもとにした筆者の考察です。
養老費用を考えるうえで注目したいのは、支援による収入は変動しても、馬の生活に必要な費用が同じように減るわけではないという点です。
TCCの預託料分配型の仕組みを使い、支援口数が変わった場合を試算してみます。
| 支援口数 | 会費総額 | 預託料への配分額(70%) |
|---|---|---|
| 20口 | 110,000円 | 77,000円 |
| 10口 | 55,000円 | 38,500円 |
※1口5,500円、預託料への配分率70%として計算した仮定の例です。実際の支援口数の減少や、特定の馬の収支を示すものではありません。
20口から10口に減ると、預託料への配分額は月38,500円少なくなります。
一方で、支援者が減ったからといって、馬の食事や毎日の世話を半分に減らせるわけではありません。
ここには、毎月必要な飼養費と、支援によって得られる資金の変動という、異なる二つの問題があります。
この差を埋めるには、継続的な会費だけでなく、寄付の積み立てや予備資金など、複数の備えが役立つと考えられます。
特に、突然の医療費や支援者の減少が起きた場合、誰が不足分を負担するのかをあらかじめ考えておくことが重要です。
馬の余生は数年で終わるとは限りません。
一時的に資金を集めることと、将来にわたって飼養を続けられることは別の課題なのではないでしょうか。
だからこそ、支援額の大きさだけでなく、無理なく続けられる支援の仕組みや、長期的な資金計画にも目を向けたいと考えます。



馬の暮らしは毎日続くもの。一人が大きな金額を負担するだけでなく、多くの人が無理なく支え続けられる仕組みも大切ですね。
まとめ|引退競走馬の養老には月額預託料と追加費用が必要
引退競走馬の養老費用は、施設や契約条件によって異なり、月額預託料だけで年間100万円を超える場合もあります。
大切なのは、毎月の料金だけで判断せず、追加費用と長期的な負担を含めて考えることです。
馬が安心して余生を過ごせるよう、費用の実態と継続的な支援の必要性に目を向けていきたいですね。
※本記事は執筆時点で確認できた公開情報をもとに作成しています。料金・受け入れ条件・支援制度は変更される場合があります。実際の契約や支援の申し込み前に、各施設・団体の最新情報をご確認ください。考察部分には筆者の見解を含みます。
出典・参考資料
- 引退馬協会「引退馬の引き取りをお考えのあなたへ」
- 引退馬協会「土佐黒潮牧場|預託施設情報」
- 引退馬協会「アヴニールファーム|預託施設情報」
- あしずりダディー牧場「預託について」
- 引退馬協会「あしずりダディー牧場 命の会|預託施設情報」
- TCC引退競走馬ファンクラブ「預託料・サービス料について」
【引退競走馬の支援についてもっと知ろう】
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